前回に引き続き塾無し中学受験の先行事例を調べています。
今回はこちらの書籍を読んでみました。SNSでも話題になっているようで、ご家族でテレビ出演も果たされてようですね。
普通の両親の下で育った普通の子が「ほぼ塾無し」で開成中学に合格
書籍やブログなどで塾無し中学受験について調べてみると、やはり多いのは高学歴なお父さんによるパパ塾というパターン。
お父さん自身が中学受験を経験されていない場合でも、やはり地頭が良いからか、テキストや過去問をある程度こなすだけで、難関校にも十分対応できるようです。
しかし今回読んだこちらの書籍はちょっと違います。
著者は、特に高学歴でも富裕層でもないごく一般的なご両親の下生まれた「ぎん太さん」。中学受験で開成中学に合格した、現役開成高校生です。
「ふつうの子」だったぎん太さん
ぎん太さんの幼少期のエピソードによると、特別早熟なタイプというわけでもなく、普通のやんちゃな男の子だったようです。
幼稚園時代はお友達と一緒に遊ぶためのルールを理解したりきちんと自己紹介をしたりといったことが苦手で、いわゆる「しっかりした子」ではなく、むしろ幼いタイプの子だったと思われます。
無理なく楽しく自然に知識を増やす。お母さんの工夫が詰まったおうち勉強法
やんちゃなぎん太さんの将来を心配したお母さんは、少しでもぎん太さんが困ることが減るよう、幼少期から試行錯誤してさまざまな知識を教えていきました。
その特徴は「無理なく楽しく」。
部屋中に地図を貼ったり、
お風呂にポスターを貼ったり、
歌で九九や社会や理科の知識を覚えたり、
家族でカルタ遊びをしたり、
博物館や美術館にたくさん連れて行ったり。
つまり遊びと勉強を区別することなく、普通に生活する中で、自然と知識が増えていくように工夫されています。
子どもはもともと好奇心旺盛。勉強を苦行にしないことが大切
ぎん太さんは小さいころポケモンが大好きで、進化系まで全ての名前を覚えていたそうです。
我が家の4歳の息子もそうですが、膨大な数の電車の名前を憶えたり虫の名前を覚えたり、好奇心に基づく子どもの記憶力には驚くべきものがあります。
遊びと区別しない勉強法は、この好奇心の延長線上で学び続けることでもあります。
大人になるといつの間にか「勉強はつらい」と刷り込まれていることに気づきます。しかし幼い頃から好奇心を大切に育てていくことで、自然と知識が増えていき、学年が上がって複雑な勉強になっても自分から自ら学び続けることができるのではないでしょうか。
勉強は分かると楽しいものです。
だからまずは分かること大切にし、知識が楽しく自然に身につくような環境を整えてあげることが親の役目なのだと感じました。
ほぼ塾無し中学受験。塾の利用は小6の秋から。
ぎん太さんの場合、最初から塾無しでと決めていたわけではなく、受験勉強を進めていく中で塾を必要と感じたのが小6の秋に過去問をスタートした時期でした。
それ以前にも塾の授業を体験されたようですが、授業が簡単すぎたり難しすぎたりして暇に過ごしたり、手を挙げても指名してもらえずストレスだったりなど、塾に通うことのメリットを感じなかったそうです。
たださすがに開成中学ともなると、過去問の質問先を確保しておく必要があります。そこで早稲田アカデミーの志望校別対策コースを算数単科で受講し、授業後やFAXなどで質問をしたとのこと。
明確な目的意識を持って塾を利用する姿勢が印象的で、小学生でここまで自分の学習に主体的に取り組めるというのはなかなかないのでは、と感じました。
幼少期から好奇心を大切にしてきた積み重ねが、「開成中学」という目標を得て一気に花開いたように思われます。
最難関校ほど基礎の深い理解が求められる中学受験
ぎん太さんは、進研ゼミと予習シリーズを使ってコツコツ学習し、時には大きく遡って復習をするなど、自分のペースを大切に、納得しながら受験勉強に取り組んでいました。
「この自分のペースで納得できるまで」というのは大手中学受験塾に早くから通ってはなかなかできないこと。塾では非常に速いペースで授業が進むので、よほどの上位生でない限り、大半の子どもは塾のカリキュラムに消化不良を起こします。
しかし 小学生生活を犠牲にしない中学受験 でも紹介されていましたが、難関校ほど基礎への深い理解が問われるのが中学入試です(実は東大の入試も同じ)。
(こちらの記事でご紹介しました)
ぎん太さんの勉強法は一見効率が悪そうに見えますが、実は開成中学のような最難関校が求める生徒像とは、彼のような「一つ一つ深く理解しながら学習を積み重ねてきた子ども」なのかもしれません。
まとめ:「普通の子」であっても好奇心を伸ばすことで最難関校に合格できる
普通の子がどうすれば勉強を得意になるか、というヒントが詰まった大変濃密な一冊でした。
塾無しでの中学受験を目指そうと考える我が家ですが、息子はまだ4歳。
闇雲な先取り学習ではなく、いかに楽しみながら自然と知識を増やし、好奇心を伸ばしてあげられるかが、将来大きく成長するための鍵だと改めて確認できました。
また、ぎん太さんが中学受験に臨んだ際、ご両親がプレッシャーをかけることなく大らかに構えてくれていたことがとても有難かったと述べられていました。
勉強も受験もあくまで子どもが幸せになるための手段の一つ。
我が子のためと思うほど、熱くなってしまうのが受験の怖さですが、この本で学んだ大変貴重な子どもの思いをしかり胸に刻み、我が子にとっていつでも絶対的な味方でいようと、心新たにしました。